色について

色について

田島 健一

「人間は忘れるいきものである」などというのは、どこかのエライひとが言いそうなステレオタイプな言葉だ…と思う。

そんなときふと、僕たちは何を一番最初に記憶から失うのだろうか、と考えた。

それは「色」ではないだろうか。

「色」は儚い。僕たちは記憶の中で「色」を正しく再現することができない。日頃「色」からさまざまなことを感じ取っているにも関わらず、僕たちはそれを真先に忘れ去るのだ。不思議だ。そして僕たちは、その真先に忘れたものを決して思い出すことができない。

いうまでもなく「色」の正体は「光」である。たぶん、俳句は「色」を─つまりは「光」を言葉でそこにとどめておく、ひとつの方法だ。俳句にも「色」がある。それは、読み手の目の前で一瞬だけ煌いて、その一瞬を二度と思い出すことができない。二度と。

物の見えたる光、いまだ心に消えざる中にいひとむべし(三冊子)

(「炎環」2011年6月号より)

 

 

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