父親である私
父親である私
田島 健一
うちの息子は丸顔で、どうやら顔つきは父親である私に大そう似ているそうだ。
小学一年生からスイミングスクールに通い始め、すでに3年以上経つ。かつて通っていたスイミングスクールを1ヵ月で辞めた父親である私とは、ずいぶん違う。
彼は真面目にこつこつと練習しているようで、少しずつタイムを上げて、ついに二十人程の小学生たちのなかで三位の記録をたたき出した。こつこつとやることが苦手な父親である私とは、まったく似ていない。
すごいじゃないか!と息子の快挙に有頂天になる父親である私を横目に、まるで何ごともなかったように息子は、遠いまなざしでもう別のことを考えているようだ。
丸顔以外、父親である私とはまるで性質を異にする息子は、父親である私とは違ってシャイで無口で勇敢で、父親である私を限りなく楽しませてくれる。
夕立を来る蓬髪の使者は息子 健一
(「炎環」2012年6月号より)
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